米国の商業地産業は2008年以来最大の崩壊リスクに直面しており、米銀行に1600億ドルの損失をもたらす可能性がある。
これは南カリフォルニア大学、コロンビア大学、スタンフォード大学、ノースウェスタン大学の研究者が、長期的に高い金利が商業不動産業界や米国の銀行システムに与える影響を評価する新しい作業論文で得た結論である。
同論文は、FRBがインフレ抑制のために取った急進的な利上げ行動を研究するために以前開発した枠組みを用いており、今回の利上げサイクルは株式、債券、商業不動産などの資産を押し下げたという。
同報告書によると、10%から20%の商業用不動産ローンにデフォルトが発生した場合（これは金融危機期間中のデフォルト率予想値のローエンド）、米国の銀行は約1600億ドルの損失を被る可能性がある。
「この証拠は、金利が高くなり続け、不動産価値が回復しなければ、違約率は大衰退期と同等かそれ以上のレベルに達する可能性があることを示している」と研究者たちは書いている。
実際、他の専門家も商業用不動産分野のトラブルに警告している。業界の債務は約1兆5000億ドルで、今後数年で満期になるからだ。さらに損失の見通しは、今年初めに発生したシリコンバレー銀行（SVB）爆発事件と同様に、別の銀行の取り付けに対する懸念を引き起こしている。
この作業報告書では、無保険預金者の半数が口座を空にするという仮定の下で、商業用不動産に関連する損失は31 ~ 67の小規模な地域銀行の倒産を招く可能性があると推定している。また、340の銀行は金利上昇で赤字になる可能性がある。
「もしこのような商業用不動産ローン問題が金利の低い2022年初めに明らかになれば、私たちが最も悲観的な状況でも、銀行が倒産することはありません。しかし、私たちの研究によると、FRBの急進的な利上げ後、銀行の資産価値の大幅な低下は銀行が不良債権事件を防ぐ能力を大きく弱めていることが明らかになった。このような開放性は、銀行が重大な返済能力リスクの影響を受けやすいようにしている」報告書は付け加えた。
投資家はこれまで、米国の銀行システムの安定性に注目してきた。今年8月、格付け機関ムーディーズ（Moodys）は米国の大・中型銀行10行の信用格付けを引き下げ、銀行資産リスクの上昇を理由に別の銀行を審査リストに入れた。