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1990年代のバブル崩壊以降、日本が成長停滞に陥り、企業の競争力が低下した時期を「失われた30年」と呼びました。「失われた30年」がなぜ生まれたのかについては、多くの専門家が意見を述べていますが、パリ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、「さらに失われた10年」を懸念する見解を述べています。彼の考えでは、働く人の社会保険料の支払い基準が高くなったことが大きな理由の1つです。
「過去30年間の景気低迷は、成長戦略などで解決できる問題ではないと私は考えています」と、思考の機敏なエコノミストはインタビューで開口一番述べている。
それによりますと、日本のバブル崩壊後の1990年代半ば以降、IT革命によってインターネットが普及し、世界の様相が一変しました。コーノさんの分析によれば、中所得層はすでに解体しているということです。「情報は瞬時に国境を越えて移動します。これにより、日本などの先進国の企業は、中国や東南アジアなどの労働コストの安い国に工場や生産能力を置きながら、国内で遠隔管理できるようになりました。」コーノくんによれば、経済のグローバル化が進んだ結果、先進国では、それまで生産の現場で忙しかった中所得層の労働者が仕事を失っているのです。
その影響は非製造業にも及んでいます。コーノさんは、「私が勤めていた銀行では、もともと窓口や預金業務などに人手をたくさん配置していましたが、デジタルシフトによって人手が大幅に削減された」と言います。つまり、これらの業界でも中間所得層はなくなっています。
転職をするにしても、高いスキルがなければ優遇された仕事を得ることは難しいと報じられています。こうして、そこそこの収入の失業者たちが、低技能低賃金の仕事をするようになったのです。グローバル化で競争が激しくなった日本の経営者たちは、低賃金の非正規雇用を推進し、コスト削減で短期的な利益を確保しています。河野氏は、「世界を席巻するIT革命の中で、日本で新たに生まれ、拡大を続けているのは、低賃金の非正規労働者をフル活用するビジネスモデルだけだ」と述べています。
コーノくんは、この時期に仕事を失った中所得層に対してスキルトレーニングを実施すべきだと指摘しています。つまり、今日の岸田文雄政権の最重要課題の一つである「労働者の再学習」が30年も早く始めればよかったのです。「残念なことに、当時は企業も政府も、低所得の仕事に転じた人たちを支援することができず、みすみす非正規雇用の人たちが増えていました」。
記事によると、河野氏が岸田政権の経済政策の中で最も懸念しているのは、ベンチマークとされる「異次元の少子化対策」です。年間3兆5千億円(約230億ドル)の財政がどこから出てくるかはわかりませんが、社会保険料の引き上げで1兆円を捻出するという案が出てきています。
「彼らは小泉政権の失敗から全く教訓を得ていないようです」彼の言う「失敗」とはどういうことですか。コーノさんは、1990年代半ばから後半にかけて、日本社会の中所得層がどんどん萎縮し、政治がこの悪循環をさらに加速させたと考えています。その発端となったのが小泉政権の社会保障制度改革です。
「私がいる間は消費税は上げません」小泉氏は、首相在任中にこの言葉を繰り返し、社会保障財源の充実のために、現役の社会保障給付金の引き上げを求めました。河野氏は、「増税は世論の支持を得にくいので、政治的な抵抗が少ないほうから財源を賄う」と考えています。
厚生労働省の統計によると、日本の非正規労働者の割合は一九八九年には一九・一%だったのが、二〇二二年には三六・九%とほぼ二倍になるそうです。河野氏に言わせれば、当時の政府の政策は、非正規労働者をもっと雇うように企業に働きかけるようなものだったと言えます。
新型コロナ前の2017年から2019年にかけて、日本は労働力不足社会になっても個人消費は伸びませんでした。コーノくんに言わせると、それは多くの人の生活が保障されていないからです。「非正規職の就業者たちは景気が低迷すれば、自分たちが調整弁として働き口を失うことを恐れ、消費に積極的ではありません。給料が上がっても、いざというときに備えて貯蓄をする傾向があります。これが日本経済停滞の最大の原因です」
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